K-ENT: 面接の秘密

面接のヒミツ

面接試験が大好きだという人は少ないだろう。これから、面接を控えている高校生諸君は不安や緊張や戸惑いがあると思う。うまく話せるだろうか、あがらないだろうか、面接官が意地悪だったらどうしようと思い悩むかもしれない。それは当然である。たった数十分で合否が決まってしまうのだから。

そんな短時間で、ひとりの人間を理解できるのだろうか、と疑問に思うかもしれない。もっともである。私は民間企業に勤めていた時に何度も入社試験の面接官をしたことがある。候補者はまず書類選考や筆記試験でふるいにかけられる。それを突破してきた応募者に対して、通常、1次面接をする方は3人である。不思議なことに、応募者に対する3人の評価が大きく食い違うことはない。100点満点として、ひとりが90点をつけて、あとのふたりは20点と60点などというケースはめったにない。多くの場合は10点以内の差に収まってしまう。これはどうしてだろう。人間の判断力にはなにか共通のモノサシがあるのだろうか。

実は面接官には無意識のバイアス(偏り)がかかっている。面接官たちは長年、同じ企業で働いているあいだにその企業特有の習慣や考え方、雰囲気を身につけている。いわゆる社風である。そうすると、面接官は、応募者が社風に合うかどうかを無意識のうちに重要な判断材料にしているのだ。つまり、企業の面接というのは受験者の能力や人格を評価しているというわけではなく、面接官に似た者を探しているだけという側面がある。だから、企業の面接で落ちても何ら卑下する必要はないのだ。

面接による採用方法にはメリットもデメリットもある。メリットは、同じような意識と価値観の集団が出来上がるので団結力や愛社心が高まることである。軍隊やスポーツのチームは訓練によってそうなっている。

デメリットは、同じような人間が集まると、新しいアイデアが生まれにくく、経済環境や社会が大きく変化した時に対応できなくなってバッタリと倒れてしまうことだ。同族会社や学閥(ある学校の出身者によって作られる派閥)がはっきりしている会社や役所は活力を失って時代から取り残される。

話を大学に戻そう。大学のAO入試や推薦入試の場合はどうか。大学は多様な学生がお互いの個性を磨き合う学びの場を提供したいと考えている。とくに世界最強の競争力を誇る米国の大学はこの点を強く意識しており、入試の最大の力点はダイバーシティ(多様性)を確保することにある。さまざまな個性をもった学生がぶつかり合って磨き合うことが競争力の源泉であると信じられているからだ。

わたしたち国学院大学経済学部も金太郎飴(どこで切っても同じ金太郎の顔が出てくるように作った棒状の飴)のようになってはいけないと考えている。しかし、毎年、受験生面接をしながらため息をつきたくなることがある。受験生が志望動機として「國學院大學は130年の歴史と伝統を誇り・・・」と丸暗記してきた決まり文句を吐き出す時でときである。そこで「長い歴史があるとどんないいことがあるの?」と聞き返すと、とたんにバッテリーの切れたロボットのように沈黙してしまう。

ここまで読んでくれたあなた。もうお分かりと思います。先生や親に教えられたことを鵜呑みにして反復するだけの人は求められていません。決まり文句を言う時でもきちんと自分の言葉で理由をつけられるあなた!そんな受験生とお会いできることを楽しみにしています。(高橋克秀・経済学部教授)