K-ENT: KENT1のテーマの選び方

K-ENT1では、研究発表をしていただきますが、おそらく皆さんが迷うのはテーマ選びでしょう。それは現役の大学生も同じなんですが、まさに「どういうテーマを切り出してきたか」ということ自体が評価の対象になります。

では、どのようなテーマが適切なんでしょうか。

答をさきに書きます。皆さんの場合、それは「コース」と連動したテーマです。経済学部は3つの学科からなりますが、もう一段深く見ると8つのコースから成り立っているんです。漠然と「経済」に関するテーマを探すのは難しいので(なぜならテーマが巨大すぎるからです)いっそ「コース」に連動したテーマをみつけてみるほうがかんたんです。なぜなら、より具体的だからです。

コースの内容については国学院大学の公式ホームページから「経済学部」を開いて「カリキュラム・ゼミ」をご覧ください。

http://www.kokugakuin.ac.jp/economics/kei05_00045.html

コース選択そのものは入学時と三年次に自分で決めることができますので、KENT1受験の段階で決まるわけではありません。自分の受験する学科のコースをよく見て「とりあえずKENT1はこれでいく」と決めて、図書館やインターネットでテーマ探しをしてください。そうすると、具体的なテーマが見えてきます。

では、コースごとにテーマ地図を描いてみましょう。

■経済学科

「経済の歴史と理論」コース

このコースは、経済についての「理論」「歴史」「思想」を3本の柱にしています。理論自体は難しいので、たとえば特定の商品の価格のしくみや、経済についての制度を1つ選んで調べましょう。果敢にゲーム理論にチャレンジするのもありですし、比較優位説についても高校の資料集に説明があったりします。歴史については、大きな歴史ではなく、特定の商品ジャンルやサービスや企業の歴史を調べましょう。あるいは、経済の歴史にとって重要と思われる出来事や事件に絞って調べましょう。経済思想については、たくさんいる有名な経済学者を1人選んで、その人の考え方を整理してみるのもいいでしょう。

「日本の経済システムと政策」コース

このコースは、日本経済に特化しています。特定の産業のしくみを調べたり、それに対する日本の政策を調べます。いわゆる「談合」や「下請け構造」や「企業別組合」のような国内事情や構造的問題を特定して調べます。たとえば、大きなテーマとしては、銀行に対して政府や日本銀行がどのように規制しているのかを調べます。日本人の働き方についての問題を1つに絞って調べるのもいいでしょう。バブル経済、デフレスパイラル、「失われた10年(あるいは20年)」など、戦後の日本経済の特定の時期を取り出して詳しく調べるのもありです。

 「グローバル経済」コース

このコースは、世界経済について学びます。日本も含めて、特定の国家に絞ってグローバリゼーションがどのように進展しているかを調べたり、日本と特定の国との経済関係を調べたりするといいでしょう。この場合は、どの国を選ぶかによって難易度も印象も違ってきます。当てずっぽうで決めるのではなく、いろいろ比較してから決めましょう。何ごとも理由が必要です。それさえ明確であれば、どの国でもかまいません。工夫のしどころはここにあります。日米構造協議や現在進行形のTPPのような経済交渉に焦点を当てるやり方もあります。EUのような壮大な経済の実験について取り上げるさいは、論点を1つに絞ってまとめましょう。ここでも「なぜ、その論点なのか」が明確でなければなりません。

■経済ネットワーキング学科

「地球環境と開発」コース

いわゆる環境問題のコースです。大学では環境経済学と開発経済学を軸に学びますが、KENT1の段階では、環境問題全般を範囲として、興味のある特定の問題や現象を取り上げてかまいません。テーマの絞り方がポイントになります。「どの時期の、どの地域の、どの現象なのか」絞り方を工夫してください。

とくに開発の問題は、日本に暮らしていると縁遠い問題だと感じられますが、歴史的に見ると非常に大きな問題です。近代的なものと伝統のぶつかりあいや、機械的なものと生身の人間の出会いは、この日本でも繰り返し問題になってきました。たとえば特定の環境汚染についてアジアやアフリカの国々を事例にしてまとめてみるといいでしょう。あるいは環境問題に取り組んでいるNGOを取り上げて、その活動を調べるというのもありです。

「地域づくりと福祉」コース

この場合の「地域」とは現代日本の特定の地域のことを指します。都道府県より小さい単位ととらえてください。経済格差や少子高齢化や都市化・過疎化の問題は、日本のどの地域にも見られます。このコースでは、そのような問題を特定地域に絞って研究します。ですから、自分に縁のある地域や、祖父母・親族のいる地域を題材にして、なるべく具体的に調べましょう。ネットでもある程度調べられますが、できるならその地域の役所や図書館を訪ねると、かなりオリジナルなデータが得られます。オリジナリティは評価されるので、足を運んで資料探しをしてください。具体的であればあるほど評価されます。固有名詞をしっかり明確に調べてください。そうすると、地域の人々が意識的に街おこしや福祉を進めているのが見えてくるでしょう。それがネットワーキングなんです。

「情報メディア」コース

コンピュータやインターネットの影響は誰の目にも明らかです。新しいサービスも続々と登場しています。これらについて漠然と論じてもインパクトはありません。当たり前だからです。ですから、ここでも特定のサービスやシステムや企業に絞って論じる必要があります。「東日本大震災におけるツイッターの果たした役割」のように、それぞれの情報メディアが特定の事態やテーマに対して、どのような役割を果たして、どのような結果になったのかを追究する必要があります。この場合、注意すべきは、信頼できる情報を利用することです。調べやすい情報がそのまま信頼できるとは限りません。情報源の吟味がポイントです。

 ■経営学科

「マネジメント」コース

ドラッカーの『マネジメント』という本が有名なので、組織の経営であることはご存じでしょう。企業はもちろんですが、行政・学校・大学・病院・政党・福祉施設・スポーツチーム・グループアイドル、映画づくりなど、あらゆる組織にマネジメントがあります。それらのうちの特定の組織を取り出して、詳しく経営の仕方を調べましょう。詳しくなければ、あまり意味がないのです。というのも、いかなる組織であってもマネジメントとして共通の部分があるので、それを論じても凡庸な発表になりかねないからです。どんな組織でも「その組織特有の事情」があるわけで、それを強調することがポイントです。

「会計情報」コース

会計・財政状態・経営成績などは数値データとして明らかになります。商業科にいる人は、すでにかなりの勉強をしているでしょう。それを生かして、公になっている資料を基に特定の組織の会計について論じるのもよいでしょう。また、会計に関する専門職として税理士や会計士がありますが、一般企業の経理部門における仕事も同様のものです。これらの仕事をやっている人たちの業務内容を調べるのもいいでしょう。

■まとめ

おそらく自分の選んだコースのところだけ読んでも解決しないことが多いはずです。ヒントは、この文章の全体に散らばっていますので、全部をしっかり読んでヒントにしてください。あとは、あなたがどれだけの手間ひまをかけるかです。一般的な学力はあまり関係ありません。

また、きれいに収めるやり方もありますが、むしろ意図的に「はみだす」やり方もあります。そのさい注意しなければならないのは「はみ出し方」で、具体的な事例に向かってはみ出していくのが基本です。というのは具体的な事例に即して調べていくと、たいてい1つの考え方には収まらないからです。それはそれで問題点として切り出しておきましょう。無理に解決しなくてもいいんです。おおよその見込みが立てばいいでしょう。

というわけで、K-ENT1が大学の学問研究に近い選抜方法なんです。これがラクラクできる人は、大学の勉強とマッチングがいいんじゃないでしょうか。ご健闘を祈ります。(野村一夫)