指定校制推薦で国学院経済学部を受験する生徒の皆さんへ

国学院大学経済学部は指定校推薦の制度を、各高校と約束を交わし、高校が一定の条件において(これを「出願要件」と言います)本学部にとって適切な生徒を大学に推薦する制度と位置づけています。

しかし何の準備もしないで受験に臨むと面接官の質問にきちんと答えられないことになりがちです。面接試験の評価によっては不合格になることもあります。これは大学にとっても高校にとってもよろしくありません。高校と私たち大学との信頼関係が揺らいでしまうからです。指定校推薦を受けるあなたは、自身のことだけではなく、より広い視野をもち「所属する高校を代表している」との自覚を持ち、相応の準備と心構えで面接試験に臨んでください。

では、どのような準備が必要となるのでしょうか。具体的にアドバイスをしておきましょう。

まず「指定校制推薦入学試験要項」はいうまでもなく、「大学案内」や「入試情報ガイドブック」を熟読しください。それらには、本学部の志願者に「求められること」が書いてあります。必要ならば、高校の先生などの手助けを借りて理解を深めてください。

気をつけて欲しいのは、指定校制推薦入学制度と言っても、高校からの推薦を受けただけだということです。合格や入学が確約されているではありません。あなたの合格には、国学院大学経済学部に対する強い高い志向性をもっていることが必須条件となります。志向性とは、この場合「意欲」と言い換えてもいいでしょう。「自分なりの展望をもっている」とも言えます。あなたには、「意欲」、「自分なりの展望」があるはずです。

さらに、もう少し具体的に考えてみましょう。「自分なりの展望をもつ」とは、「自分はなぜ国学院大学経済学部○○学科に進学したいのか」を説明できるようにすることです。自分のやりたいコースをよく選んで、そのコースに対応する志望理由を考えるのです。

ここで「コースって何?」と思われた方も多いでしょう。経済学部は3つの学科からなりますが、もう一段深く見ると8つのコースから成り立っています。漠然と「経済」について考えるのは難しいので(なぜならば、テーマが巨大すぎるから)学科の中に置かれた「コース」に連動したテーマと今の自分が関心を持っている事柄を関連づけるほうが近道です。なぜなら、そうすることであなたの志向性をより具体的にできるからです。

コースの内容については國學院大學の公式ホームページから「経済学部」を開いて「カリキュラム・ゼミ」をご覧ください。 http://www.kokugakuin.ac.jp/economics/kei05_00045.html

コースは入学時に選択しますが、三年次に変更することもできます。受験の段階で決めたものであっても、入学後に変更ができます。しかし、入学にあたっては、あなたが志望する学科のコースをよく見て自分のコースを決め、「あなたのテーマ」を探してください。すると、より具体的なテーマが見え、自分の志望理由書との接点も見えてくるでしょう。

では、コースごとに、そこで学べるテーマを考えてみましょう。

■経済学科

<経済の歴史と理論>コース

経済についての「理論」「歴史」「思想」を三本の柱にしたこのコースは経済学の王道です。ミクロ経済学とマクロ経済学がとても美しく組み立てられている理論の魅力は、じつにさまざまな領域に応用できることです。たとえば特定の商品の価格決定のしくみや、「お金がお金を生む」金融の世界の不思議を解くことができます。大企業や金融・証券業界で働きたいと考えている人は、理論をしっかり学ぶのがよいでしょう。歴史については、経済史という分野が対応します。経済史はスケールの大きな歴史から、特定の商品ジャンルやサービスや企業の歴史までいろいろです。歴史の好きな人は文学部の史学科に行くことだけが選択肢ではありません。じつは経済学科でも歴史は学べます。経済思想については、実にいろいろな考え方があります。現在の諸問題を考えるとき、経済学の古典を読むことが思いのほか役立ちます。単に「見えざる手」が何とかしてくれるとか、「福祉の充実に向けた政府の役割は増大している」とか、そんなに単純ではありません。読書好きにはチャレンジしがいのある分野です。「理論」「歴史」「思想」を勉強しておくと、受け売りの考えを暗記するのではなく、自分の頭で考えることができるようになり、そうすると勉強が楽しくなります。

<日本の経済システムと政策>コース

このコースは、日本経済を中心に学びます。特定の産業のしくみを学び、それに対する政府の産業政策について調べます。このコースが国学院大学経済学部での得意分野です。さまざまな業界の実態の調査を通じて、いわゆる「談合」や「下請け構造」や「企業別組合」のような国内事情や構造的問題を具体的に考えます。ですから、自分の関心のある業界について詳しく勉強したいのであれば、このコースを選ぶと良いでしょう。あなたはどんな業界に興味がありますか。業界が特定できれば、そこからこのコースとのつながりも考えることができます。リーディングカンパニーはどこか、行政による規制はどうなっているのか、そこで働く人々はどんな待遇を受けているのかなど、どんどん具体的になるはずです。将来、自分が進みたい業界がはっきりしていれば、これらの問題について少し調べてみるとよいでしょう。

<グローバル経済>コース

このコースは、グローバルに展開する世界経済について学びます。日本も含めて、特定の国家に絞ってグローバリゼーションがどのように進展しているかを調べたり、日本と特定の国との経済関係を調べたりします。この場合は、どの国を選ぶかによって難易度も印象も違ってきますが、理由さえ明確であればどの国を選択してもかまいません。日本とアメリカ、日本と中国、日本とEUなど、日本と他国・地域の経済的な結びつきに焦点を当ててもいいでしょう。あるいは、近年注目されている中東諸国やアフリカ諸国について、経済発展の様子を調べるのでも面白いでしょう。ただしここでも「テーマ」が明確でなければなりません。商社や大手メーカーなどに行きたい人、いわゆる「グローバル人材」への道は、ここから開けます。外国語の問題も、それに関連して留学の問題も、具体的に考えておく必要があります。

■経済ネットワーキング学科

経済ネットワーキング学科については、学科全体として考えるよりも、3つのコースの集合体ととらえてください。ですから、3つのコースのうちのどれか1つと志望理由を結びつければいいのです。

<地球環境と開発>コース

最初は、いわゆる環境問題のコースです。大学では環境経済学と開発経済学を軸に学びますが、受験段階では、環境問題全般を範囲として、興味のある特定の問題や現象を取り上げてかまいません。テーマの絞り方がポイントになります。「どの時期の、どの地域の、どの現象なのか」絞り方を工夫してください。それらと自分の世界との関連を想像しましょう。

とくに開発の問題は、日本に暮らしていると縁遠い問題だと感じられますが、歴史的に見ると非常に大きな問題です。近代的なものと伝統のぶつかりあいや、機械的なものと生身の人間の出会いは、この日本でも繰り返し問題になってきました。自分の地元ではどうなのか。それをどうすべきかについて考えてみて、どのようなことを学びたいかを導き出してください。こういう勉強は、環境問題に取り組んでいるNGOやNPOへ参加するのに大いに役立ちます。

<地域づくりと福祉>コース

この場合の「地域」とは現代日本の特定の地域のことを指します。都道府県より小さい単位ととらえてください。経済格差や少子高齢化や都市化・過疎化の問題は、日本のどの地域にも見られます。このコースでは、そのような問題を特定地域に絞って研究します。ですから、自分に縁のある地域や、祖父母・親族のいる地域を題材にして、なるべく具体的に調べましょう。ネットでもある程度調べられますが、できるならその地域の役所や図書館を訪ねると、かなりオリジナルなデータが得られます。オリジナリティは評価されるので、足を運んで資料探しをしてください。具体的であればあるほど評価されます。固有名詞をしっかり明確に調べてください。そうすると、地域の人々が意識的に街おこしや福祉を進めているのが見えてくるでしょう。それがネットワーキングなのです。このコースは地元志向の高い人に向いています。

<情報メディア>コース

コンピュータやインターネットの影響は誰の目にも明らかです。新しいサービスも続々と登場しています。これらについて漠然と論じてもインパクトはありません。当たり前だからです。ですから、ここでも特定のサービスやシステムや企業に絞って論じる必要があります。「東日本大震災におけるツイッターの果たした役割」のように、それぞれの情報メディアが特定の事態やテーマに対して、どのような役割を果たして、どのような結果になったのかを追究する必要があります。この場合、注意すべきは、信頼できる情報を利用することです。調べやすい情報がそのまま信頼できるとは限りません。情報源の吟味がポイントです。将来的な職業としては、メディア関係やコンピュータ関係、通信業界があります。情報科の先生の資格も取れます。

■経営学科 <マネジメント>コース

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』という本によって、経営学の古典であるピーター・ドラッカーの『マネジメント』は高校生にも広く知れ渡ることになりました。マネジメントとは組織の経営のことです。企業はもちろん、行政・学校・大学・病院・政党・福祉施設・スポーツチーム・グループアイドル、映画づくりなど、あらゆる組織にマネジメントがあります。それらのうちの特定の組織を取り出して、それをうまく運営し成長させてゆく経営の仕方を詳しく調べましょう。詳しくなければ意味がありません。というのも、いかなる組織であってもマネジメントとして共通の部分があるので、それを論じても凡庸な発表になりかねないからです。どんな組織でも「その組織特有の事情」があり、それを強調することがポイントです。それと志望理由をつなげてみてください。家業を継がなくてはならない人も、家業を将来どうしたいのかというヴィジョンを説明できるようにしましょう。

<会計情報>コース

企業の財務状況や経営成績などは数値データとして明らかになります。商業高校に通学しているならば、すでにかなりの勉強をしているでしょう。それを生かして、損益計算書や貸借対照表など公になっている財務資料を基に特定の組織の会計について論じるのもよいでしょう。また、会計に関する専門職として税理士や会計士がありますが、国税専門官や一般企業の経理部門における仕事も重要です。これらの仕事をやっている人たちの業務内容を調べるのもいいでしょう。どんな組織でも会計業務は必要不可欠です。自分の将来構想と結びつけて説明するようにしてください。

■まとめ

具体的に何を勉強したいのか、自分自身のヴィジョンは何かということは、あなたが選んだコースのところだけ読んでも明確にはならないかもしれません。そんなときには、他のコースを含めてこの文章の全部をしっかり読むことで、ヒントをえることができるはずです。あとは、あなたがどれだけの手間ひまをかけて、調べ、そして考えるかです。

「志望理由書」について、もうひとつ補足しておきましょう。おそらく「國學院大學が東京の渋谷にあるから」ということも志望理由となるかもしれません。しかし、単に「あこがれ」だけではなく、「渋谷だから○○を身につけたい」「都心の生活で○○を体験してみたい」と言えなければなりません。地元にはなく都心や渋谷にあるモノって何ですか。具体的に言えるようにしておいてください。

面接の際には、あなたが自分で書いた志望理由書に基づいて面接試験を実施します。その際には、「自分の言葉」で語っているかが問われます。多少の言い間違いがあってもかまいませんから、受け売りの他人の言葉ではなく、自分の言葉で答えてください。私たちは、あなたが大人と普通のコミュニケーションができるかどうかを確認しています。そうでないと大学の学修はできないからです。あくまでも言葉で勝負できるかどうかを試しているわけです。その意味では、事前に家族や先生の前で面接試験の練習を繰り返しておいてください。大人に対して言い慣れておくことが大事です。

何事もしっかりとした準備をしたのか否かが結果を左右します。その準備は単に試験に合格するためだけではなく、入学後の大学生活をも左右するものとなるのです。このことを心に留めておきましょう。

ご健闘を祈ります。(野村一夫)